微妙なバランスを保つ全方位外交 6
指摘するところですが、中国内部の経済と特区経済とが当初の思惑のようには結びつきません。
むしろ特区経済が孤立的に外部の香港経済に吸収され、ひいては世界経済との依存的な結びつきを強めるという傾向を見せたことにありました。
・・・その結果、特区を抱える広東、福建などの諸省全体が香港をセンターとした外部世界経済に引きつけられて中央の統制から外れる結果になり、自立的な方向を強める結果になったのです。
それでも、かりに香港が中央政府の強力な主導下に置かれているのなら、むろん香港に吸収された特区および広東、福建など華南地域も間接的に中央の統制下に入ることになります。
そのため、その自立化傾向は起きる余地がなかったのです。
しかし、香港は元来、中国からの亡命者によってできた国際都市として、一貫して反北京的性格を濃厚に持ってきました。
さらに89年の天安門事件によって香港のこうした傾向は、一時、いっそう強まる傾向すら見せました。
1997年の中国への返還を前にして、香港は現在、若干落ち着きを取り戻しつつあるとはいえ、依然、反中央色を弱める様子はなく、今後、中央が香港をその統制下に置けるという保証は必ずしもありません。
こうした情勢下に浦東地区開発を従来の特区と同様のものとして推進しても、むしろ中央政府の統制力を弱め、単に新しく地方の自立化傾向を強める結果しかもたらさないことは明らかだったのです。