微妙なバランスを保つ全方位外交 4
たとえば隣国である日本がアメリカとの間で貿易摩擦を中心として種々の矛盾を抱えていることは、当然、中国の戦争回避の努力にとって無視しえない条件となってきます。
1991年5月ごろから聞かれるようになった「日本の政治大国化を黙認する」との中国の半公式的見解も、明らかに日本との接近を当面の戦争回避のための外交戦略から重要視しはじめたことを示すものと言えるでしょう。
・・・ただし、ここでも中国が日米関係の破綻を望んでいないことは明らかです。
日米関係が緊張と協調の中間で揺れ動いていることこそ、中国がジャパン・カードを引くことができるための不可欠の条件となるからです。
これとまったく同様の理由から、東欧激動以後、とりわけ90年2月のソ連共産党中央委員会総会の一党独裁制放棄の決定があってのち、一時冷え込んでいたソ連との関係も、91年3月に入って急速に修復されるようになりました。
ソ連は当時、軍事的にアメリカに大きく差を開けられていました。
しかも経済的に疲弊の極にあるとはいえ、なお現在、軍事的にアメリカに対抗しうる事実上唯一の軍事強国であることは誰もが認めるところです。
この限りでソ連・カードは中国にとってなお引くに足るものだったのです。